トキワジムに夕闇が迫る頃、グリーンは今日のジム戦を終え、ホッと一息ついていた。入り口のドアが開き、誰かが入ってくる気配を感じる。
「わりぃ、今日はジム閉めちゃったんだわ……」
言いかけたグリーンの声が途中で止まる。そこに立っていたのは、見慣れた顔、カントー地方の現チャンピオン、リーフだった。
「……て、リーフか」
グリーンの呆れたような声に、リーフはにこりと笑う。リーフの後ろから、堂々とした足取りでニドクインがジムの中へ入ってくる。その姿に気づいたグリーンのニドキングも、待ってましたとばかりに駆け寄った。二匹は互いの体を擦り合わせ、懐かしそうに鳴き交わす。
「また突然やってきたな、チャンピオン様は」
グリーンは肩をすくめながらリーフに話しかけた。
「たまにはね。元気にしてた?」
「まあな。そっちはどうだ?相変わらずメディアに引っ張りだこか?」
「もう、勘弁してほしいよ。それより、ジムリーダーの仕事はどう?大変?」
二人は、ニドキングとニドクインの触れ合いを横目に、近況を語り合った。チャンピオンとしての重圧、ジムリーダーとしての苦労、そして何よりも、ポケモンたちとの日々の出来事。話は尽きない。
しばらくすると、ニドクインとニドキングが、満足したように二人の元へ歩み寄ってきた。
「もういいの?」
リーフがニドクインに問いかけると、ニドクインは満足そうに一声鳴いた。ニドキングも、どこか名残惜しそうにニドクインを見つめている。
「そっか。それじゃあまた来るね」
リーフはニドクインの頭を撫で、グリーンに軽く手を振った。ニドクインを連れて、リーフは夕闇に包まれ始めたトキワジムを後にする。
グリーンは、去っていくリーフの背中を見送りながら、小さく呟いた。
「まったく、自由な奴だぜ」
だが、その表情は、どこか穏やかだった。