底力

定期的に行われるチャンピオン戦。

いつもは余裕でチャンピオンの勝利で終わるが今回は珍しく追い込まれていた。

チャンピオンの手持ちは手負いのリザードンのみ。

対する挑戦者も最後の1匹だがリザードンの最も苦手とするいわタイプのゴローニャ。

(ここまで予定通り、最後の一体もゴローニャで戦える…!)

挑戦者はあと少しで「絶対王者」の異名を持つチャンピオンを打ち負かせることに浮足立っていた。

「ストーンエッジ!」

リザードンめがけて鋭い岩が地面から飛び出し、それを縫うように避けながら低空を飛び回る。

決定打は与えられていないがわずかなダメージと体力をじわじわと奪っていっている。

ゴローニャとリザードンの向こう側で佇むチャンピオンは唇を嚙みしめて顔を伏せているようだ。

(行ける…!)

勝利を確信したその時、

「フラム、メガシンカ!」

心の底から楽しそうなチャンピオンの声がフィールドに響き渡る。

瞬間、彼女の胸元にあるメガストーンとリザードンの首に取り付けられていたリザードナイト、そしてリザードン自身が輝きだす。

光の後に現れたメガリザードンYが一瞬巨大な黒竜に見えた。

(メガシンカしたからといって大して大きさは変わらないはず…なのに何だこの威圧感)

「かえんほうしゃ!!!」

唖然とした隙を付くように彼女の指示が飛ぶ。

リザードンがふわっと浮いたかと思うと、反らした首を勢いよく突き出しフィールドが火炎で覆われる。

「あっつ…!」

リザードンとは多少距離があるはずのここにすら火傷しそうなかえんほうしゃが止むと、そこにはゴローニャが地面に倒れていた。

(これが相性差すらひっくり返す『絶対王者』の本気…)
 
実力差を見せつけられ僕の目の前が真っ暗になった。