勲章の輝き

夜の森は、焚き火のパチパチという音と、虫たちのささやきに包まれていた。リーフは、フラム(リザード)やエーフィ、ゲンガーたち手持ちのポケモンをボールから出し、皆で焚き火を囲んで夕食を済ませたところだった。

「さてと、そろそろ寝る準備でもするかな」

リーフはそう言って、着ていたジャケットを脱ぎ、タンクトップの裾に手をかけた。その瞬間、焚き火の揺れる炎が、彼女の白い背中を照らし出す。そこには、うっすらと、しかしはっきりと、大きな引っかき傷が残っていた。

フラムは、その傷を見た途端、ハッとしたように目を見開いた。まだヒトカゲだった頃、ポッポの群れに襲われそうになった自分を、リーフが身を挺して守ってくれた。その時、リーフの背中に、あのポッポの鋭い爪が食い込んだのを、フラムは鮮明に覚えていた。

(僕のせいで……)

フラムは、シュンと耳を伏せ、しょんぼりと俯いた。自分のせいで、リーフにこんな傷が残ってしまった。その事実が、幼いリザードの心を重くした。

リーフは、着替えの途中でフラムの様子がおかしいことに気づいた。いつもなら元気いっぱいのフラムが、まるで叱られた子どものように小さくなっている。

「どうしたの、フラム?」

リーフは着替えの手を止め、フラムの隣にしゃがみ込んだ。フラムは、ちらりとリーフの背中を見て、またすぐに目をそらす。その視線の先を追って、リーフは自分の背中の傷に気づいた。

「ああ、これのこと?」

リーフは、くすりと笑った。そして、フラムの頭を優しく撫でた。

「大丈夫だよ、フラム。これはね、痛い傷なんかじゃないんだ」

フラムは、不安そうにリーフを見上げた。

「これはね、私があなたを守れた証。あなたと出会って、一緒に旅を始めた、大切な大切な思い出なんだ」

リーフは、フラムをそっと抱き寄せた。フラムの小さな体が、リーフの背中の傷に触れる。

「私にとっては、誇らしい勲章なんだよ。だから、気にしないで良いんだ」

リーフの温かい言葉と、優しい抱擁に、フラムの心はゆっくりと解けていった。

焚き火の炎が、二人の影を大きく揺らしていた。夜の森に、温かい絆の光が灯った瞬間だった。